アレクサンドル・バン
父が自然派ワインのファンだった
サンセールからロワール川を渡り、プイィ フュメの丘に向かう途中に、「ドメーヌ アレクサンドル バン」があります。彼は1977年生まれ、子供の頃、サンセールにある祖父の家の近くに移り住んだ時、農業をしていた祖父を見て興味を持ち、農業学校に進みました。農業とは関係のない仕事をしていた父が自然派ワインのファンであった事から、ワイン造りに興味を持ち、メヌトゥー サロンの「ドメーヌ アンリ プレ」で醸造長を務めた後、2007年に畑を購入して独立しました。中生代ジュラ紀後期の地層であるキンメリジャンやポルトランディアン土壌を備えた畑から印象的な味わいのワインを生み出しています。保守的なソーヴィニヨンブランからの脱却
アレクサンドル バンがワイン造りの地として選んだプイィ フュメやサンセールは、ソーヴィニヨン ブランの銘醸地としてフランス内でも名を馳せるワイン産地です。しかし、その著名さ故にブルゴーニュ地方のシャブリ地区と同様の構造的な問題を抱えています。その問題とは、サンセールやプイィ フュメという強力なブランドが真摯なマーケティングや品質追求を不要とし、ある程度のクオリティのワインであれば売るのに困らないという状況が、この地の生産者の多くを保守的な思考に走らせている事です。そんな中に登場したのが2人の異端児、サンセールのセバスチャン リフォーとプイィ フュメのアレクサンドル バンです。2人に共通するのは、完熟したソーヴィニヨン ブランで造るというスタイル。一般的な醸造学校では、ソーヴィニヨン ブランにおけるワイン造りのセオリーとして、早い収穫や収量をある程度多くすることなどを教わると言います。しかし、他の産地に目を向けるとブドウのバランスの良い成熟度は、黒ブドウや白ブドウを問わずに重要視されており、なぜソーヴィニヨン ブランだけが青くて酸っぱい状態で収穫しなくてはならないのか、という疑問が彼らの原点となりました。