2021年産ボジョレーヌーボーの成育状況は?
この時期楽しみなのがボジョレー・ヌーボー。ボジョレーヌーボーは収穫し立てのぶどうから短期間で醸造し、フレッシュなうちに楽しむのが通例。だからこそ、ブドウの出来によって味わいが毎年異なるのも楽しみの一つです。
日本国内でもいろんなお店が夏過ぎから予約受注を始めます。解禁までは販売者も消費者も一切口にすることはできません。(決められたルールなのです)
という事で、2021年ボジョレーヌーボー選びの参考になるよう、生育状況をまとめてみました。
目次
ボジョレー・ヌーボーとは
Beaujolais Nouveau:ボジョレー・ヌーボーは、フランス・ブルゴーニュ地方南端に位置するボジョレー地区で造られる軽快な赤ワイン。ガメイ種という黒ぶどうが原料です。Nouveau:ヌーボーがフランス語で”新しい”を意味しています。つまりボジョレー・ヌーヴォーとは、ボジョレー地区でその年に収穫したガメイ種から造られる新酒のことを指しています。
なお、このボジョレー地区では熟成タイプのワインも造られており、近年そのエレガントさと華やかさに注目が集まっています。「ボジョレー」と聞くだけで敬遠される方もいらっしゃいますが、上質な熟成タイプを知らずに判断するのはちょっと損しているかもしれません。
また、黒ブドウのガメイ種の他に白ブドウのシャルドネ種も栽培され、同じく上質なワインがたくさんあります。しかしながら、栽培・収穫量は圧倒的に少ないので、日本国内でお目にかかる確率はかなり低いと言えます。見つけたら運がいいかもしれません。
ボジョレー・ヌーボーの解禁日はいつ?
ボジョレー・ヌーボーは解禁日、正確には「解禁日時」が決まっています。それが【11月第3木曜0時】です。各国の標準時に合わせて解禁となるため、ボジョレー・ヌーボー産地のフランスより日付変更線に近い日本の方が早く0時を迎えます。本国よりお先に乾杯できるって、ちょっと得した気分ですね。
2021年は11月18日木曜日0時が解禁となります。
解禁までは、私たち販売事業者も一切口にすることはできません。きちんとルールを守るからこそ、解禁後の1口目がよりおいしく感じられるのかもしれませんね。
毎年恒例、ボジョレーヌーボーのキャッチコピー
毎年発表されるボジョレー・ヌーボーのキャッチコピー。「百年に一度」や「昨年を上回る」など、いつも良いように言ってるだけでしょ?と言われそうな表現が続くこともありました。ちょっと振り返ってみましょう。
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2003年「110年ぶりの当たり年」
2004年「香りが強く中々の出来栄え」
2005年「タフな03年とはまた違い、本来の軽さを備え、これぞ『ザ・ヌーボー』」
2006年「今も語り継がれる76年や05年に近い出来」
2007年「柔らかく果実味豊かで上質な味わい」
2008年「豊かな果実味と程よい酸味が調和した味」
2009年「過去最高と言われた05年に匹敵する50年に一度の出来」
2010年「2009年と同等の出来」
2011年「100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え」
2012年「偉大な繊細さと複雑な香りを持ち合わせ、心地よく、よく熟すことができて健全」
2013年「みずみずしさが感じられる素晴らしい品質」
2014年「太陽に恵まれ、グラスに注ぐとラズベリーのような香りがあふれる、果実味豊かな味わい」
2015年「過去にグレートヴィンテージと言われた2009年を思い起こさせます」
2016年「エレガントで酸味と果実味のバランスがとれた上品な味わい 」
2017年「豊満で朗らか、絹のようにしなやか。しかもフレッシュで輝かしい 」
2018年「理想的な条件の元、素晴らしいヴィンテージへの期待高まる」
2019年「生産者のテクニックが重要な年」
2020年「極めて早い成熟と乾燥した夏による、究極のミレジム」
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2003年、2009年、2015年は非常に日照量の多い年で、肉付き良くパワフルなワインに仕上がっていたのを思い出します。一方、2004年、2013年などは冷涼な気候だったり悪天候によってブドウの熟し方に苦労を強いられた年でした。2019年にあるように、ブドウの出来が思わしくない年は生産者の腕前が試されるので、本当に良いボジョレー・ヌーボーを判断するのが難しくなってきます。
では2021年は、どんなキャッチコピーでしょうか?
10/23、サントリー社のボジョレー・ヌーボーが日本に到着しこのように表現しています。
「糖分と酸味のバランスの良いブドウが収穫でき、ワインはイチゴやチェリーのような香りが感じられる」
なるほど。言いえて妙。では、作柄状況から様子を判断してみましょう。
ボジョレー・ヌーボー、2021年の気になる作柄状況は?
ブドウは1年周期で実を付けます。手塩にかけられて熟したブドウは秋に収穫を迎え、そこからワイン醸造が始まります。
ボジョレー・ヌーボーの場合は、収穫から醸造までほんの数カ月で出荷されます。熟成という時間によるコントロールができない分、原料ブドウの出来がワインの出来を大きく左右するワインとも言えます。
では、2021年はどんな年だったのでしょうか?ハウディがお付き合いしている輸入業者様がプロ向けに公開している情報や、ボジョレーワイン委員会の発表などからの情報を独自にまとめてみました。
2020年~年明け
冬季は平年並みの気候
3月
暖かい気候
4月
ブルゴーニュ全域に及んだ霜害の影響で、収穫量の低下懸念
4月上旬(6日~8日)に訪れた大寒波で、モルゴンなど特に北部の区画のぶどうが霜害の被害
4月8日から13日まで、気温がマイナス4~8度となって霜害が起こり、収量減が決定的に
5月
気温が低く、開花も例年より2週間ほど遅いが、後半天気は回復し気温がしっかり上がった
6月
霜被害
雷雨、雹害により収穫量は激減が予想され、厳しい
6月に入って気温は高くなったが雨が多く、ベト病対策が大変な作業となっている。
例年より3週間ほど遅い開花
6月21日と22日にはボージョレ全域に雹が降り、収量がさらに減ることに
7月
低温で雨がちな天候が続く
8月
8 月 26 日(木)以降、気温は上がっている
9月
天気の良い日があっても、9月上旬はさらに降雨あり
総評
温暖化が続くボジョレーでは年々葡萄の熟度は上がり、収穫時期も早まる傾向が続いています。つまり、ここ数年は最高の条件が揃っていると言えそうなのですが、2021年の悪天候にはかなりの苦労を強いられたのは間違いないでしょう。結果的に収量の減少は免れられませんでした。
生産者によっては収量が50~60%減となり、今年はヌーヴォーは造らずに通常のボジョレーまたはボジョレー・ヴィラージュとして販売するところもあるそうです。
更にはコロナ禍による航空便の輸送コストの上昇及び、外装費の値上げなども重なり、現地出荷価格はさらに上がってしまいました。
2021年ボジョレー・ヌーボー生産者の声
これだけ厳しい条件の年は、やはり生産者の力量が問われます。ぶどうの生育、収穫のタイミング、選果作業、醸造の期間と味わいのバランス等々、気が抜けないのは言うまでもありません。
ここで、NHKプロフェッショナルにも特集された日本人醸造家・仲田晃司氏から寄せられた2021年展望を紹介します。
年に1回きりのものだからこそ、飲んだ人がワインを好きになるきっかけとなり得るような、ワインとしておいしいヌーヴォーを造りたいです。醸造家として、このような年こそ燃えるものがあります。(中略)
2021年ヴィンテージは生産者間の差が大きくなる「生産者の年」になると思います。現時点で予想される収穫開始予定日は9月20日頃ですが、私はさらに10日ほど遅らせて、9月末に最高度に完熟したぶどうを収穫するつもりです。「ガメイは、完熟が命」ですので。
(2021年7月11日)
2021年のボジョレー・ヌーボー生育状況 まとめ
奇跡的に出来の良い年というのは例年以上に日照量が増えるなど、異常気象がワインにとって都合の良い方向に働いた年とも言えます。しかし、どんな農作物も、毎年豊作とは限りません。2021年はボジョレー地区のブドウにとって異常気象が非常に厳しい方向に働いたのは、紛れもない事実と言えるでしょう。
しかしながら、不規則な気候、大幅な収穫減は、生産者にとって又とない「チャレンジ」となります。このチャレンジを結果に結びつける事ができる生産者を知っていることで、より確実に美味しいボジョレー・ヌーボーを楽しめる事でしょう。
技術のある生産者、評価の高い生産者を知る方法は、やはり信頼のおけるワインショップで尋ねてみる事です。ぜひ貴方のお気に入りショップを見つけて、クオリティの高いボジョレー・ヌーボーを楽しんでみてください。
ハウディでは、信頼のおける生産者のみを厳選して取り扱っています。
ボジョレー・ヌーボー選びで迷ったら、一度覗いてみてください。
オーガニックの物を始め、世界的に有名なレストランが採用するものなど選りすぐりが目白押しです。